温泉紀行
遠山 喬
  長崎には2年2ヶ月赴任していたが、その間にローカル温泉を訪れた思い出を、古い記憶をさかのぼりながら記します。何せ大昔前のことなので若干あいまいな所があるのはご容赦願いたし。
(1) 下田温泉
2年目の春、現在テレビのコマーシャルにある焼酎「白波」に登場する薩摩半島の先端にある開聞岳に登りに行った。海岸からそそり立ち眺望は極めて良く、又足元から海岸を覗くが如くでした。帰りには水俣から天草の本渡に船で渡り、観光案内所に寄り、天草灘に面した下田温泉を紹介されたので訪れてみる事にした。当時は天草諸島に橋が出来ていず、田舎道をガタガタと昔風のバスで約1時間ゆられて下田温泉に着いた。伊豆半島の下田とは大違いで、数軒の宿があるのみで、バス停おりてよろず屋のおばさんに手頃な値段で、料理のおいしい宿を聞き、そこに決めた。特筆するのは、料理が全て海の幸を素材としていたことである。取れたての魚貝類なので新鮮で美味であり、その後もこれに匹敵するのは数少ないと思はれる。帰りには、又船に乗り、茂木港経由で戻ったが、今でも料理の良かった旅として印象に残っている。
(2) 荒川温泉
2年目の秋に五島列島を訪れた。今回は最初から温泉に泊まる予定の旅行であった。長崎港から福江港迄天候はあまり良くなく半ば荒れた東シナ海を渡りました。港を降りて、観光案内所に立寄ったところ、親切にも若い女性の案内人が「本日は終わりですのでバスの時間迄案内しましょう」と言われ武家屋敷の跡など歩き廻り、女性の家の前で別れた。荒川温泉はやはり数軒の集落であり、通りには赤い提灯の店があったような気がする。宿の人から「見て廻りますか」と言われたが船にゆられて疲れているので、風呂に入り料理とお酒でダウンしてしまったようである。
夜半、枕元で女性の声で「あら眠ってしまっているわ」という声が聞こえた様な気がしたが起きられなかった。ここでは料理の印象はあまり残っていない。翌朝バスで福江に戻ったところ、天候により長崎行きは本日は欠航との事で困った。帰りをどうするかとしていたところ、飛行機の臨時便の空席が少し残っているとの事で空港までタクシー飛ばして何とか乗る事ができて、無事に帰れた次第である。これが初めて飛行機を経験したのであるが、荷物に網をかぶせた後部からは海をのぞけるような割れ目があり乗っている間はヒヤヒヤでした。後年有川を訪れたことがあるが、長崎航空の相変わらずプロペラ機は乗っていて海上を飛ぶのはヒヤッとする体験である。
(3) 九重山麓の無名温泉
九重連峰の登山を終え、山道を歩いて降りて帰る途中に村営の温泉が目につき、中に誰も入っていないで一風呂あびさせて貰った思い出があるが記憶がさだかでない。帰りは竹田に向かった事だけは覚えている。
(4) 武雄温泉
温泉街の門が印象的だったが、ローカルではないので割愛したい。
以上