コネクティング ロッド ベアリングの焼損

1.1962年の夏の或る週末を利用して、愛車ダットサン1000で奈良県と三重県の県境に在る「大台ケ原」まで行ってみようということになり、研究室の4人が乗り込んで真夜中に京都を出発した。

2.宇治と奈良を経由して、「大台ケ原」には夜明け前には着くであろうと見込んで、車の空いている夜道を快適に飛ばしていた。
  宇治大橋に差し掛かった時である。前輪のタイヤが路面から飛び出していたマンホールの蓋に乗り上げ、「ガタン!!」という音と共に車体が大きく飛び上がった。
  その直後、ボンネットから真っ白な煙が勢い良く噴き出した。

3.ともかく車を止めて、ボンネットを開けてみるとエンジン下部からエンジンオイル冷却器へエンジンオイルを送っている銅管の継ぎ目から切断して、エンジンオイルが噴き出していた。

4.「大台ケ原」は諦めて、エンジンが焼き付かないようにノロノロ運転で京都に引き返すことになった。
  ところが、途中でエンジンから「ガラン ガラン」という異音が聞こえ出し、やっとの思いで研究室まで辿り着いた。

5.翌朝、早速エンジンの底を開けて中を点検すると、ピストンを上下させるためクランクシャフトに付いている4個のコネクティング ロッド(略称:コンロッド)の内1個のベアリングが焼損してガタガタになっていた。
  良く見ると、残りの3個の コネクティング ロッドの下端には潤滑油を跳ね上げるためのスプーンが付いているが、焼損したロッドのスプーンは根元から折れて無くなっていた。

6.西部講堂の前の空き地に自動車部のダットサン1000が廃車になって乗り捨てられているのを思い出し、自動車部に掛け合って、自分で分解して取り出すことを条件に、コネクティング ロッド1個を無償で譲り受けることに成功した。
  早速貰ってきたコネクティング ロッドと取り換えて、ピストンをエンジンの燃焼室に組み入れる作業を始めた。

7.ところが、ここでまた難関が待ち受けていた。
  燃焼室内を上下するピストンには両者の隙間を無くすための2個のピストンリングが溝に嵌まっていて、バネになっているピストンリングを強い力で溝の中に押し込まないとシリンダーの中に入って行かない。
  車の下に潜り込んで、上向きの状態で作業をしているので、腕が直ぐ疲れてしまう。
  やっとの思いで組み立て終り、エンジンが快調にかかったときの喜びは筆舌に尽くし難い。

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