ディストリビューター ローターの歯車損傷

1.1961年の或る日、愛車のダットサンを運転して出先から大学の研究室に帰る途中、百万遍の交差点を右折しようとしていた。
  交差点の中央に停車して、前後左右の安全を確認し、発進しようとアクセルをふかした途端、「ストン」とエンジンが停まった。慌ててスターター・ボタンを押すが、エンジンが回ってもエンジンがかかる気配がしない。
  交通量の多い交差点なので、取り敢えず車を安全な場所に移動するため、車から降りてハンドルを切りながら交差点の北西の角を目指して車を押した。周りに居た歩行者の何人かが走り寄って、車を押してくださった。
車を交差点の隅に止めて、皆さんにお礼を言い、ボンネットを開けた状態にして、助けを求めるため、徒歩で研究室に帰った。

2.研究室に居た先輩に事情を説明し、先輩の車で故障した愛車を研究室まで牽引してもらった。
  さて故障の原因は何だろうと先輩と一緒にあれこれやった後、どうやら点火系統に問題がありそうだということになり、各シリンダーに点火用の電気を供給する「ディストリビューター」のキャップを外してエンジンを回してみると、案の定 ディストリビューターのローターが回らない。
 ローターを取り出してみると、回転力を伝えるためにローター下端に付いている歯車の歯が欠けていた。

3.早速行きつけのジャンク・ショップに行ってローターを手に入れて来たが、その後が大変だった。
  「ディストリビューター」は 複数の シリンダーを持つ火花点火機関において、 イグニッションコイルで発生させた高電圧の点火電流を各シリンダーの 点火プラグに、 点火時期として適切なタイミングで通電する装置であるが、高電圧のローターから各シリンダーの点火プラグに点火電流を流すために、ローターとキャップの隙間を極限に小さくしなければならない。
  この作業が大変で、隙間が無くても大き過ぎても電流が点火プラグ側にスパークしない。何度も何度もやり直して、やっと正常にエンジンがかかるようになった。

 

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