武蔵に剣術を乞うた若武者の話

 

武蔵はその若者に、一尺の幅の板切れを指さして、こう尋ねました。

「この板の上を歩けるか?」

そう武蔵が訊くと、

「簡単じゃ」

そう言って若者は笑った。

そこで、武蔵は、

「では、この板をお前の背丈の高さに置いたときはどうだ。歩けるか?」

若者は少し考えてから

「歩ける」

と答えた。

最後に武蔵はこう尋ねた。

「では、この板を熊本城の高さまで持ち上げたら、どうだ歩けるか?」

若者はすかさず

「歩けるはずがない」

と答えた。

 

 

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