(すい) (きょう)

酔っぱらいの国だという「酔郷」は、この世界からどれほど遠いところか分からない。
そこには果てがなく、丘や険しい山の無い景色が広がっている。
その地の気候はいつも穏やかで、夜も昼もなく、寒さや暑さは感じない。
そして、どこにも人の住む集落はない。
「酔郷」の人々には愛憎も喜怒はなく、みな風を吸い露を飲み、五穀は口にしない。
人々はゆっくりと眠り、ゆったりと過ごしている。
そこには鳥獣や魚や鼈(すっぽん)が集まる。
その地へ行くのに舟や車を用いる必要はなく、ただ、酒に酔えばよいのである。
                     (王績「酔郷記」より)

 

 

 

 

 

 

 

 

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