バハマ諸島(Bahamas)

「それは風邪薬。・・・・・・それは胃腸薬。・・・・・・これはトランキライザー」と一所懸命説明するのだが、それを完全に無視して、そのうち、近くにいた仲間の黒人を呼んで、「キャベジン」の瓶を目の位置より高くかざしてみたりしながら、何やら相談を始めた。やっと解放されるまでに10分はかかった。

 1971年7月、英領バハマ諸島の一つ、グランド・バハマ島のフリーポート国際空港でのことである。

 バハマ諸島は、フロリダ半島の南東、キューバ島の北東に位置し、大西洋上に北西から南東の列をなした島と珊瑚礁よりなる島群で、イギリス領である。約700の島と無数の礁とがあるが、人が住んでいるのはこの内の20島ほどである。礁や礁同様の小島を除いた面積は11,406平方キロメートル、人口約20万人、首都はニュープロビデンス島のナッソーである。コロンブスが新世界に第一歩を印したサン・サルバドル島はこの列島中にある。大部分は浅海底をなす大バハマ堆と小バハマ堆との上にある低平な珊瑚島群で最高点も130メートルにすぎない。気温は22〜28度C、降水量1,200mm、7月から10月は暴風雨に襲われることもある。常夏の健康地で、交通の便利な島は保養地となり、また、野菜、果物が栽培され、不便な島では熱帯木材やサイザル麻を産する。水産では海綿採取が主であるが、べっ甲、貝類、真珠などの産もある。

 マイアミから飛び立ったボーイング727は、20分後には高度を下げてフリーポート国際空港に着陸した。国際空港とは名ばかりで、ちっぽけな離れ島の空港である。しかし、そこには、真夏の太陽がギラギラと輝き、溢れんばかりの観光客で活気を呈していた。空港内で働いているのは、ほとんどこの島の原住民の黒人である。冒頭のシーンは、税関で、スーツケースの中に入れていた薬を麻薬と疑われた(錠剤の麻薬は聞いたことがないが・・・)ところである。