アイスランド

 

「日本の方ではありませんか?」

顔を上げると、いつの間にか目の前に、背は低いが、がっしりした体格の初老の紳士と、その夫人と娘と思われる二人の女性が立っていた。

「ええ、そうです」

「やはり、そうでしたか。わたくしは、サルナスです」

差し出された名刺には、<アイスランド共和国 国会議員 R. サルナス>と印刷されていた。

「サルナスさんですか。お名前は、よく存じております」

「日本の方は、すぐ飛んできて下さるので、大変感謝しています」

場所は、アイスランド共和国の首都レイキャビクの空港待ち合い室。クラフラ地熱発電所の定期検査で異常が発見されたため、客先要請により、日本から飛んできたところである。サルナス氏は、その地熱発電所を実現させた実力者だ。

時は、1979年6月、日本を発って、途中ブリュッセルとコペンハーゲンで乗り換えて、30時間かかってアイスランドのケフラビック国際空港にたどり着き、国内線に乗り換えるため、レイキャビク空港へ移動したところであった。