草津温泉ての字屋 ( 2 )
「湯もみショー」は、湯畑の下流から上流に向かって流れの右手の道を登って行くと、 丁度登り切った辺りの小屋「熱の湯」でやっています。 上演開始時間は、7:00,7:35,15:00,15:35,16:00,16:35の6回です。 入場料は500円で、旅館で割引券を貰うと450円で入れます。 ショーの内容は、湯もみショー/お客様湯もみ体験/踊りショー/お客様湯もみ体験となっていて、希望者に早い者勝ちで湯もみの体験をさせてくれます。 私は勿論イの一番に申し出て、湯もみ体験をさせてもらいました。 草津音頭に合わせて湯もみ板を動かすと、脳が刺激されて気持ち良くなります。 湯もみ体験に挑戦すると、ご褒美に賞状と草津温泉の名前が入った手拭いを貰えます。 草津温泉を訪れた記念に是非挑戦してみてください。
宿に帰ると、早速「天然岩風呂」に飛び込みました。 2つの浴場は男女入れ替え制になっていて、1日に8:30、16:30、22:00の3回入れ替えが行われます。 この日は、16:30から22:00まで「天然岩風呂」が殿方用、「たまゆらの湯」が御婦人用になっていました。 「天然岩風呂」に飛び込んで驚きました。実にいい湯なのです。 地下から湧き出てきて、初めて空気に触れたばかりの温泉が肌から体内に滲み込んで来るのが判るような感じでした。 こんなに気持ちの良い温泉に入ったのは初めてです。草津音頭の歌詞の意味が良くわかりました。 この湯は、天然の岩肌から湧き出てくる湯を薄めずにそのまま浴槽に注いだもので、正に100%天然の温泉です。だから温泉のエキスが体内に滲み込んで来るのが判るのでしょう。 「五足のくつ」を造られるとき、山崎オーナーが100%天然の温泉にこだわった気持ちが判る気がします。 「天然岩風呂」は、正面に青光りのする大きな天然の岩があり、その手前に2mX4m程の大きさの横長の檜の浴槽があって、4箇所から湧き出てくる湯を浴槽に注いでいます。 この浴槽の中で大変に面白い現象を発見しました。 湯の中を浮遊していた無数の小さな湯の花が一瞬のうちに消えて透明な湯になったかと思うと、次の瞬間にはまた無数の小さな湯の花が現れて湯の中を浮遊し始めるのです。 恐らくこれは、湯の温度が微妙に変化しており、温度の変化に合わせて炭酸カルシュウムの溶解度が変化するためだと思います。 洗い場は狭く、蛇口が右手に2つ左手に1つあるだけです。しかも左手の蛇口が故障していてお湯にならないので、あとで仲居さんに報告しておきました。
夕食は部屋食ですが、この日はたまたま隣の「しゃくなげ」の間が空いていたので、そちらで頂きました。 料理は京風懐石で、一品ずつ出されます。この日の献立は「水無月の懐石」で、 先付け いくらおろし和え 椀 蛤羽二重蒸し(これが絶品!!) 蓋向付け 甘鯛の桜蒸し 八寸 観涼味 お造り きんめ鯛のお造り 煮物 若竹煮 焼物 真名鰹の西京焼(京懐石の定番料理だが美味) 揚げ物 椎茸の真丈揚 酢の物 氷頭なます(これも美味) 焚合せ 温しゃぶしゃぶ(豚肉のしゃぶしゃぶ、これは余分) 御飯 香の物 止め椀(ちょっと塩辛かった) 水菓子 となっていました。 京風懐石と名打っているだけに、どの料理も薄味で美味。女将自らデザインした器も料理を引き立たせていました。 女将の立川ふさ子さんは、和服の似合うスラッとした体型と知性溢れる眼差しが印象的な美人女将ですが、陶器の絵付けの他、ドライブ、ゴルフ、華道に茶道と多彩な趣味の持ち主でもあります。 飲み物は、冷酒として新潟の「麒麟山」と地酒の「湯美人」があります。 「麒麟山」はやや辛口、「湯美人」はやや甘口です。 グラスワイン ( 赤 ) も飲んでみましたが、こちらの方は開栓後時間が経ち過ぎていてダメでした。
夜10時に風呂の男女が入れ替わるということで、23時頃もう一つの浴場の「たまゆらの湯」に行ってみました。 ところが、どうしたことか入り口の掛札が「ご婦人用」のままになっています。恐らく架け替えるのを忘れたのでしょう。仕方ないので、入り口にスリッパが無いことを確認して、自分で掛札を「殿方用」に架け替えて入りました。 「たまゆらの湯」の方は内湯と半露天風呂付きで、内湯はジャグジー付きです。 湯質は「天然岩風呂」とは異なり透明に近い湯ですが、すべすべした感じでこちらもなかなかのものです。 ただ、表通りに面しているため、周囲を竹壁で囲まれているのは止むを得ないことだと思います。
朝食は宿泊部屋と同じ階の食事処「懐石」で頂きました。 内容は、八寸(かまぼこ、きゃらぶき、めんたい)、鮭の塩焼き、焼き海苔、茶碗蒸し、小松菜のおひたし、トマトのサラダ、白ご飯、味噌汁、香の物などで、量は多からず少なからず、中でも鮭の塩焼きが美味でした。 朝食後、2回目の「天然岩風呂」にドップリ浸かり、硫黄の香りを肌に着けたまま「ての字屋」を後にしました。
「ての字屋」の屋号の由来は、源頼朝公鷹狩の折案内役を務めたのが「ての字屋」の祖で、以来ひとびとにより「天の字」湯本家と称せられたことに由来するのだそうです。 草津温泉開闢の祖というだけでも格式の高さを感じますが、「一客一亭」のもてなしを守ってきた老舗旅館の良さは、設備面の近代化の遅れを差し引いてもなお超一流であることに間違いないでしょう。 35,000円の宿泊料金を高いと感じるかどうかは、宿泊客の価値観に依ると思います。 |